〜新年のご挨拶〜
「古き殻を捨てて新たな目標に向かって進みましょう」
皆さん明けましておめでとうございます。良い新年を迎えられたことと思います。今年は巳年であります。十二支の動物の中で唯一脱皮するのがこの動物です。脱皮は、昔からの殻を破り、新たな自分自身へ生まれ変わる段階でもあります。今年は新しい生活や人生が開ける年とも考えられます。良き医療人として去年よりは成長した自分になるように目標を立て、それに向かって進んでゆきたいと思います。もちろんスタッフ全員が前進すれば病院もより良い医療ができるようにレベルアップできるでしょうし、病院も生まれ変わることができます。
さて2025年といえばいわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年であり、それによって社会保障費の増大、医療や介護分野の人材不足、労働力の確保困難などの難問がクローズアップされています。勿論、高齢者が増えることにより、認知症も増加します。これらの状況に対して政府は地域包括ケアシステムや地域医療構想、人材確保支援、さらにはIT化などで対応しようとしていますし、認知症には認知症基本法で対応しようとしています。私たちもこれらの状況に呼応してゆかねばなりません。
認知症基本法の目的は「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進する」ことにあります。これらのことを理解して、認知症の人を差別することなく、認知症の人々と共にあると言うマインドを常に抱いて取り組む必要があるかと思っております。このマインドさえあれば、よい医療実践が可能であると思います。
もう一つ注目したいことは、認知症治療薬の開発です。レカネマブやドナネマブは認知症治療薬として認定され、少しずつではありますが、認知症の方々への治療が行われております。認知症自身はなかなか治らない病気とされていますが、その元凶であります、βアミロイドタンパクを除去する薬でもあり、少しずつではありますが認知症治療への光が見えてきたかと思っています。研究者達の研究はとどまるところを知りません。少しでも認知症の人たちが健常の人と同じような生活に戻れるよう願いたいところであり、当院でも協力できるところは積極的に関与し、認知症進行の防止に貢献したいと思います。
昨年は地震とともに年が明けた年でありました。それでもその後、オリンピックやパラリンピック、さらには大谷翔平選手の50-50達成などの活躍が目立ち、さらには佐渡金山の世界遺産登録、被団協のノーベル平和賞受賞など嬉しいこともありました。今年もきっと良いことがあるかと思いますし、良い年となるように、巳年にふさわしくマイナスとなるような古い殻は捨てて新たな気持ちをもって人間蘇生という医療者に与えられた役割遂行に邁進していきましょう。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
東員病院・認知症疾患医療センター 院長 山内 一信